ダンスは身体を使って表現するもの。
キレや複雑な動きをするためにも筋トレをしよう!
という事もよく言われていはいるけれど果たしてそれは本当なのか?
結論からいうと
『上手くなりたい人はまず練習、その上で必要に応じて筋トレ』
です。
ダンスをスポーツのように捉えた場合、注目すべきは筋肉ではなく身体の使い方(脳)。
筋トレはもちろんやったほうが絶対良いです(後述しますがメリットが多い)
良いんだけど、そもそもやったほうが良いことなんて世の中死ぬほどあるよね。
英語とかプログラミングとか読書とか自炊とか
でも、人間時間が限られてるので優先順位を決めないといけない。
その中でダンスが上達するという点で考えると圧倒的に練習が先。
極端だけど普段ダンスやってないジムで鍛えてる人がキレキレのダンス踊れますか?っていうとイメージしやすい。
今回はそのへんのダンスと筋トレにまつわる話を分かりやすく解説していきます。
・ダンスが上手くなるためには筋トレしたほうが良いのかな?
・なんでレッスンで筋トレするんだろう?
・ダンスにおける筋トレのメリットが分からない
・ダンスの先生に筋トレしろと言われたけど筋トレは嫌い
・キレを上げるために筋トレしようと思ってる
もくじ
ダンスにおける筋トレのメリット・デメリット
そもそもダンスにおける筋トレのメリットってなんなのか?
筋トレ自体は肉体的にはもちろん、うつ病に効果があったりメンタル面にも良い影響がありますが、
ダンサーにとって筋トレするとどんな良いことがあるのか?
についてカンタンに説明します!
メリット
①体幹を鍛えることにより複雑な動きやバランスでも動けるようになる
これが一番良く言われてるやつで⬆プランクや腹筋などをひたすらレッスンでやっている理由はコレ。
体幹って要は身体の土台、胴体の事。
土台がしっかりしていないと腕や脚を上手く動かしたりすることは難しいので鍛えておいた方が良い部分。
②身体が格好良くなる
③基礎代謝が上がり体型を維持しやすくなる
見た目!
ショーケースや発表会など、人にダンスを見せる場合はだらしない身体よりは引き締まった身体のほうが格好良く見えるし衣装も映える。
筋肉量が増えると代謝が上がって平常時のカロリー消費量があがり体型維持につながる。
④怪我の防止
僕が筋トレしてる理由の一つ。
筋肉を強くすることで関節への負担を軽減したり、複雑な動きでもバランスが取りやすくなったりする。
手を床についた時に手首が痛いのが悩みだったんだけど前腕鍛えたらかなり軽減されてきてる。
⑤ダンスだけでは負荷をかけづらい部分を短時間で鍛えやすい
僕が筋トレしてる理由のその2。
練習量が多い日は翌日筋肉痛になったりもするけど、通常のダンスの練習では筋トレほど鍛えられない場合が多い。
ブレイキンの場合も、筋肉を追い込むまでその技をやる前に疲労が来ることもあるし、鍛えられる場所も限られてくる。
筋トレは特定の部位に負荷をかけて鍛えることができるので鍛えたい部位があるなら狙って鍛えることができる。
⑥自信がつく
ダンスはエンターテイメントの側面もあるので、人に魅せる時は堂々とパフォーマンスしたい!
筋トレをすることによって体型に自信が持てたり、脳内にテストステロンというやる気を引き出す物質が出て、自信につながったりします。
自信が無い人は筋トレをして下さい。
1.身体がカッコ良くなる
2.異性にモテる
3.テストステロンというホルモンが溢れて気分上々
4.上司も取引先もいざとなれば力づくで葬れると思うと得られる謎の全能感
5.恋人に裏切られてもバーベルがいるという安心感
以上の理由から自信が付きます— Testosterone (@badassceo) June 1, 2015
デメリット
①筋肉痛による練習への影響
おそらくこれが一番のデメリット。
筋トレをガッツリやった翌日とかは筋肉痛がひどくて思うように身体を動かせなかったり、単純に筋力低下してるのでブレイキンのパワームーブやスキル系をやるのが危険な場合もある。
ダンスやっててもガッツリやった日は筋肉痛にはなるけどね。
②衣装や服装のサイズ問題
シャツの首が通らない、肩周りがはちきれそう、脚が入らない、同じ衣装でも明らかに見た目おかしいなど、Bboyが良く経験することでもあるけど、筋トレによって身体が大きくなった人は同じような問題が起こる可能性がある。
③ケガ
筋トレでもケガはあり得る。ウェイトトレーニング(ジムでバーベルとか上げるやつ)は自分の扱える重量が分かってないと怪我につながったりもするし、自重トレーニング(腕立てや腹筋)でもフォームを理解していないのに無理をしてやるとケガをする。
ケガをしてダンスの練習する時間が減ってしまうのはダンサーとしてはなるべく避けたい。
筋トレ自体はすげぇいいよ!
こうやってメリットとデメリットを見比べてみると筋トレやった方が良くね?って感じになる。
しかもダンスに影響の有りそうなメリットだけピックアップしたので筋トレのメリットは他にもある。
デメリットの筋肉痛やケガはダンスでも当然起きるし、筋肉で身体が大きくなるというのはウェイトトレーニングを入れて食事の管理などもしっかりしないとそうそう大きくはならない。
というわけで今日から君も筋トレだ!
と言いたいところだけど、
筋トレしたらダンス上手くなるか?
っていうのは全然Yesではないのでそこについて解説します!
ダンスの上達と筋肉の関係
ダンスって本来は楽しむためのものだけど
カッコ踊れるようになりたい!とかバトルで勝ちたい!とかはあると思う。
んじゃ、そもそも練習してダンスが上達するってどういう事なのか?
まず、覚えておいてほしいのが身体が動くっていうのは脳の司令があって初めて動くもの。
脳から出た司令が神経を伝わって筋肉が動く。
体で覚えろって言葉があって僕も結構使いますが、細かいこと言うと実際には脳が覚えてます。
脳は何百億個もの神経細胞でできています。
「歩く」とか「投げる」といった運動をしたり、勉強で暗記をしたりするとき、脳内の神経細胞に電気信号が通ります。
信号が何度も同じルートを通っていると、次第に道ができます。
脳内に道をつくることを脳・神経パターンの生成といいますが、これが「記憶する」ということです。
(中略)
利き手の場合は、すでに脳内に道ができている(=動かし方を記憶している)ので、箸も使うことができるし、字も書くことができます。
非利き手は、これまでほとんど使ってこなかった(=脳内に道が開拓されていない)ため、上手く動かせませんが、練習をして(=何度も電気信号を流して)脳に新たに道をつくれば、箸も鉛筆も扱えるようになるわけです。
※東京大学 深代千之教授の脳と体の関係についての記事
Post「身体で覚える」は正しい?|運動は「脳の記憶」より引用
その脳からの司令が何度も何度も繰り返し送られると、その動作の神経回路が出来上がって上達していくという感じ。
初めて教わるステップをやった時って全然できないけど、ちゃんと練習すればそのうちできるようになるのはその神経回路が出来上がっているという事。
また、自分が今までやったことのない動きでも過去に似たような動きをやってる場合はすんなり覚えられたりもするのも同じ(経験者が振り覚え早い理由の一つ)
なので、ダンス(の動きが)上手くなりたい人は練習をしてその神経回路をたくさん作りましょうって事。
筋トレしたらキレが増す?
筋トレしたらキレが上がりましたー!!
って人はいるとは思う。
けどそれが筋トレの成果である
と断言するのは難しい。
だって筋トレ以外に練習してるだろうし、筋トレをしたことによる生活習慣の変化の影響かもしれないし、ただ意識するポイントが変わっただけかもしれないから
その意見が本当の要因に行きついてるかどうかは分からない。
そもそもストリートダンス自体はまだ50年ほどしか歴史がないため、こういった研究やエビデンスなどは皆無に等しいので個人の経験や他のスポーツや運動などの実験を参考にするしかないのが現状。
んで、もし筋トレしてキレ(0〜100に行くまでのスピードと定義)が増すのであれば鍛えるべきは白筋(又はピンク筋)と呼ばれる瞬発力を発揮する時に使われる筋肉ですが
これってジムでゴリゴリに筋トレしてる方たちが主に鍛えてる筋肉。
白筋鍛えると身体がでかくなるので。
っていう事は
キレが上がる➡白筋を鍛える
白筋を鍛えてるムキムキの人たち➡キレが出せる
ムキムキ➡キレキレバブリーダンスが可能
という話になりますが、見たことあります?
ムキムキでキレキレの踊りする人(ダンサー以外で)
多分できないですよね。
ボクシングなども同じく、ムキムキの人たちが重いパワーのあるパンチは打てそうですが鋭い高速のジャブはおそらく不可能。
筋肉としては優れてるのかもしれませんが、キレのある踊りや鋭いジャブを打つ神経回路は皆無なのでできない。
そう考えると、キレを上げるためにはキレを意識した反復練習が重要。
運動学習の理論ではやりたい動作があってそれの上達を望む場合、
それに関係する筋肉を鍛えるよりも実際にその動作をやった方が効果的であるという話を本で読んだことがあります。
実際に中国の有名なダンサーにペイシングを教わった時、彼はひたすら反復練習をしていたと言っていました。ハイアットやスネアの音を意識してペイシングを正確な形で何度も何度も行うことによりキレッキレなペイシングを体得した。
またLAでダンス留学をしていた振付系のダンサーのトレーニングで、
空を切るように何度も同じ方向に手を素早く動かすトレーニングをしていました。ペイシングに少し似てましたがこれもキレを上げるためだそうです。
もちろんこういった動きを支えるための基盤となる体幹トレーニングはしたほうが良いとは思うんですが、上腕三頭筋や三角筋を鍛えたら腕の動きのキレが上がったってことはまずないんじゃないかと言うのが僕の見解です。
レッスンで筋トレするのはなぜ?
その先生に聞くのが一番早いですがw
人によって目的は違うと思うので、ダンスレッスンで筋トレする理由として考えられるのは
①身体を温めるため、ウォーミングアップ
②⬆を兼ねつつ体幹など鍛える目的
③鍛えることによってできなかったことをできるようにするため
④根性つけるため
⑤子供のコーディネーション能力を高めるための一環として(俗に言う運動神経)
あたりかな、と思います。僕はクラスによって目的が変わりますがこの理由のどれかでやることが多いです。
一般的には①、②、⑤が多いんじゃないかな。
③はブレイキン(ブレイクダンス)なので普通の筋トレというかフリーズを使ったものやバランスとりつつ高負荷のもの、④も子供にはすごい重要なことだと思う。
ちなみにちびっこクラスでバランスゲーーーム!とかやるけどあれも筋トレの一種と数えてます。遊んでるように見えて立派な体幹トレーニング。
キッズダンサーはどう?
あんまやらなくて良し!それこそダンス上達目的なら練習したほうが良い!
っていうのも子供のうちに筋トレすると身長が伸びなくなるっていうのではなくて(あれは迷信、むしろ適度な筋トレは成長ホルモンが出て良いとの見方が多い。)
大人と比べて筋トレしても効果が薄いから。
子供って大人の身体が小さい版ではなくて色んな組織や神経、骨格が発達してる段階だから
、筋トレよりもその年齢に合わせた運動をさせてあげたほうが子供にとっては良い。
やるのであれば自重を使った体幹やバランスを取るトレーニングは良いけど特定部位の筋肥大を狙うような筋トレは必要ない。
ちなみに年齢ごとの発達はこんな感じ。
<プレゴールデンエイジ(5歳~8歳ごろ)>
コーディネーション能力が発達する時期です。この時期に多くの運動を体験し、動作に対する神経回路を作っておくことで、その後の運動能力を大きく伸ばすことができます。ただし、長時間集中力が続かない年代でもあります。遊びながらカラダを動かすようなプログラムを短時間でいろいろ行うことが効果的です。
<ゴールデンエイジ(9歳~12歳ごろ)>
神経系の発達は12歳でほぼ100%となり、さまざまな動作を習得するのがもっとも早い時期です。身体の成長曲線から見て、筋力・持久力の向上はまだ先。この時期はコーディネーショントレーニングを積極的に行い、多くの動きを習得することで、その後の運動神経を飛躍的に伸ばすことができます。
<ポスト・ゴールデンエイジ(13~15歳ごろ以降)>
ゴールデンエイジを過ぎると、身長や体重など骨格の成長が著しい時期に入ります。この時期は、骨格の急激な変化によって今までできていた技術や感覚にズレが生じ、思うようにカラダを動かせなくなったり、スキルをうまく発揮できない場合があります。しかし、骨格の成長とともに反復練習を行うことで、感覚は修正されていきます。成長していく筋力などの影響により、より力強く、すばやい動作が可能となってくるでしょう。
引用元:Melos 子どもの運動神経を左右する「コーディネーション能力」とは?ゴールデンエイジ期におすすめのトレーニングも解説 (1/2) より
つまり、ざっくりいうと高校生くらいまでは色々経験させたほうが子供は身体をうまく使えるようになるよって感じ。
というわけでちびっこでダンスみたいな色んな要素のある運動してる子たちは大正解!
筋トレは絶対やったほうが良いという人もいる
うん、それはそれで正しいと思う。
そう言うからにはその人にその主張を裏付ける何かがあるから言ってるわけで(なかったらダメw)
野球界の超人イチロー選手とダルビッシュ選手の話が真っ二つに割れてるってて参考になるんだけど
イチローは身体を大きくするようなトレーニングは否定派
いやいや、全然ダメでしょそんなの。自分が持っているバランスがありますから、それを崩しちゃダメですよ。筋肉は大きくなるけどそれを支えている関節とか腱は鍛えられない。だから壊れちゃうんです
体が大きくなって嬉しくなるじゃないですか?(笑)でもスウィングスピード遅くなるんですよ。体が回らなくなるから。それでシーズン中に筋肉が落ちてきてなぜか調子がよくなる。6~7年は毎年同じことを繰り返してました。
トラとかライオンはウエイトしないですからね
一方ダルビッシュは色々試した結果、
マシントレーニングに行き着いて身体を大きくしている。
トラとかライオンは元々身体能力が高いんです。で、今って何が起きているかというと、シマウマたちがトレーニングし始めて、だからライオンたちもトレーニングしないといけなくなったっていうふうに思ってます。ただイチローさんはめちゃくちゃ頭がいい特殊なライオンだと思ってます。日本の野球界はいつまでもトレーニングしないシマウマたちなので世界で勝てない。
どちらも素晴らしい選手であり、お互い色々考えて自分の体で試した上での答えなのでどちらが正しいという話ではない。
野球のように歴史があり、競技者もファンも多くてお金がたくさん動いてるようなスポーツのトップアスリートでさえ意見が割れる。
だから必要だと思うならやったほうが良いし、そう思わないならやらなくて良いと思う。
ただ、当たり前ですがダルビッシュもトレーニング以前に野球の実力を上げるという目的があり、ピッチングなどの練習の上でトレーニングをやっています。
なので
上達したい人はまずはそこに向けた練習、その上で必要に応じて筋トレ
というのが僕の結論です。
まとめ&筋トレをした事による個人的な体感
すんげぇ長くなったのでまとめます!
・上達したいならまず練習、その上で必要に応じて筋トレ
・筋トレ自体はデメリットよりメリットの方が大きい
・体が動く仕組みは脳➡神経➡筋肉
・動作が上手くなるのは筋肉が発達したことよりも神経回路が出来上がったから
・筋肉を鍛えたからキレが増すとは一概には言えない
・特に子供は筋トレより練習
で、結局やったほうが良いの?
って話なんですが
やったほうが良いけどそれ以前に練習してないと意味ないよ
って感じ。
その上でパフォーマンス向上を図るなら
立ちダンサーの場合は体幹(プランク、ブリッジなど)
BboyBgirlはフリーズを使った筋トレ(倒立腕立てやチェアーから倒立など)
などはやったほうが良いと思います。
プロのバレエダンサーとかは皆筋トレしてるみたいだけど、周りのストリートダンサーは人によるって感じ。アスリート気質な人ほどやってる。
Bboyはパワーやフリーズの練習自体が筋トレに近いですが、筋肉を追い込む前に疲労が先に来ることも多いので、やりたいパワーに似たような動作の筋トレはすごいオススメ。
あと、僕の周りだと年齢が上な方ほどパフォーマンスのためにしっかりやってる方が多いですね。
当然、脳死で腕立てとかしても意味ないので、自分でそこの筋力が不足してるなと判断したりケガの予防としてやるなど目的をはっきりさせましょう。
個人的な体感だとプランクでヘッドスピンの安定性の向上を感じたり、前腕を鍛えることで手首の痛みが軽減されてるというのはあります。
が、あくまで一個人の体感なので参考までに。
そんな感じで、筋トレ自体はメリット多いのでもし必要だと思ったらやってみてください!
以上、ダンサーに筋トレは必要か?の記事でした!
読んで頂きありがとうございましたッ!!